バイラル係数を1より大きくして急成長する方法 ■書評■ 『バイラル・ループ』
- 2010/09/29
- 15:00
消費者による口コミによって利用者を増やしていくバイラル・マーケティングの手法が注目されている。
「バイラル」というのは英語で表記すると「viral」であり、ウイルスのように感染的に、という意味だ。
特にブログやツイッター、SNSの利用が当たり前となり、口コミの速さ・効果というのはかつてないほどの力を発揮するようになっている。
良い評判も悪い評判も加速度的に広がっていく環境が整い、時には企業あるいは商品・サービスにとっては死活問題ともなりかねない力を持っている。
本書で「バイラル・ループ」と命名しているものは、日本で言うと勝間和代さんが言っていた「はてブトルネード」の特定サービス名に依存しない名称といったところであろうか。
ITジャーナリストの佐々木俊尚さんが「まえがき」でこうまとめている。
こうしたバイラル・ループが起こるか否か、バイラル・ビジネスとして成功させられるか否かというのは、結局のところ「バイラル係数」と呼ばれる、サービスを利用する各メンバーが引き入れるあらたなメンバーの数が1を超えているかどうかに係ってくる。
当然、成長率自体には限界があるわけだが、短期間で爆発的に利用者を増やし、ネットワーク効果によって他の追随を許さない地位を確立できるか否かの問題なのだ。
本書ではアメリカにおける様々なバイラル企業の事例が挙げられている。
ホットメールも、イーベイも、ペイパルも、マイスペースも、そのサービスの普及と現在の地位の確立において、このバイラル・ループの恩恵に浴してきた(バイラル・ループが起こるように狙って仕向けたということも当然ある)。
日本においては、楽天やMixiといった企業や、Yahoo!オークションといったサービスがバイラルビジネスの成功例と言えるだろうか。
本書は、そうしたバイラル・ビジネスを成功させるためのヒントに溢れた一冊であり、マーケティングや新規ビジネス企画の参考に役立つ内容であろうと思われる。
僕自身はそうしたビジネスに直接携わってはいないのだが、やはり佐々木俊尚さんが書かれていた次の文章に目が留まった。
以前、こちらの記事(■書評■ 実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ)でも書いたとおり、僕が今後志向していきたい方向が、この「キュレーター」。
そうか、バイラル・ループのハブとなる個人、という捉え方か…と思うと、他人から「キュレーター」として認識されるには程遠いなあということを思い知る(汗)
勝手に名乗って、ブログは自分の博物館、展示館だ! と言っている分にはいいんだけどね。
「あの人の書評は信用できる」という信頼を確立する日まで、まだまだ遠い道のりを歩いていく必要があるなと改めて気合を入れ直す。
ちなみに、このブログはアメブロを利用させてもらっているわけだが、アメブロには読者登録という制度があって、これがある意味、バイラル係数を擬似的に感じ取れる仕組みになっているとも思う。
そのほか、RSSリーダーの登録者数やi2iアクセスランキングも、バイラル係数を擬似的に感じられる仕組みと言えるだろう。
記録はしていないけれど、現時点での数字を見る限り、当ブログのバイラル係数が1以下なのは間違いなさそうだ(涙)
もう一つ、書評ブロガーという観点で考えると、僕が参加している「みんビズ!」という書評ブログが思い浮かんだ。
現在、方向転換のために更新を止めている状態なのだが、みんビズ!の目指す方向を考えていくにあたって、実は本書は大きなヒントとなるのではないかと思っている。
※その意味で、みんビズ!メンバーにとって本書は必読だと思うので、よろしく(笑)
みんビズ!の方向性については主催者の具太郎さんが現時点で公言を避けているので、ここでも明らかにはできないけれど、ヒントとなるのはこのあたり。
これは前回のみんビズ!会議で話し合った内容とも整合的。
ここに他のビジネス書から得られたヒントも付け加えていくと、何か形が見えてくるような気がしている。
せっかくのビジネス書書評ブログだから、ビジネス書から得たものを活かしているところも見せたいものだ。
というわけで、仕事としてバイラル・ビジネスやマーケティングに携わっていないとしても、個人レベルでバイラル・ループのハブになる、バイラル・ループを起こしていくということに興味がある人にとっては、本書は格好のヒント集となるはず。
さて、この記事がきっかけとなってバイラル・ループ起こせるかな…? って、そんな簡単なわけないか(笑)
※ 本書はR+(レビュープラス)様より優先レビュアーとして献本いただいた。厚く御礼申し上げたい。
■ 関連リンク
書籍公式サイト: VIRALLOOP.jp
書籍Twitter: @viralloop_jp
■ 基礎データ
著者: アダム・ペネンバーグ
訳者: 中山宥
出版社: 講談社 2010年9月
ページ数:322頁
紹介文:
”感染”するビジネスが世界を変える!
オバマ大統領当選の理由から食品容器タッパーウェアの普及、ツイッターの爆発的流行まで、すべてを読み解くカギは「バイラル・ループ」にあった!
バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある
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アダム・ペネンバーグ
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■ 他の方の書評記事
おでこのめがねで読書レビュー:
バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある (アダム・ペネンバーグ)
爽快!読書空間:
アダム・ペネンバーグ著、中山宥訳 『バイラル・ループ―あっという間の急成長にはワケがある―』 講談社
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