本音の話し合いを身につけるための8つの改善点 - 書評 - ダイアローグスマート
- 2010/11/10
- 15:00

誰でも、仕事でもプライベートでも、会話の中でついつい本音を隠してしまったり、押し殺してしまうことってありますよね。
僕らは、まるで、そうすることが会話をスムーズにさせ、物事がうまくいくのだと思っているかのようです。
そうかと思えば、冷静に話し合うべき場面で、感情に任せて本音をぶちまけて、後から気まずい想いをするなんてこともあります。
これは特にプライベートな場面に多いでしょうか(汗)
ひとたび失敗してしまうと、やはり本音は押し殺したほうがいいんだと、ますます感情的にならないよう、本音を出さないようにと閉じこもってしまいます。
しかし、本当は、こんな状態が好ましい状態ではないことは分かっています。
本心では、本音をぶつけ合った話し合いをしたいと思っていますし、そうすることでよりよい関係が築けるはずだということも頭では理解しています。
本書は、特に仕事や日常生活において遭遇する「緊迫した会話」に焦点を当て、そうした場面において本音の思いを自由に行き交わせるような会話「ダイアローグ」を行うための指南書です。
よくある緊迫した会話:
相手に付き合うのをやめたいと言う
友人に貸したお金を返してもらう
上司の行動について意見を言う
同僚の仕事の悪いところを本人に指摘する
約束を守らないチームメンバーと話す
義理の両親に干渉をやめてくれるように頼む
軽く想像しただけで、どう切り出そう、どう展開すればいいだろう…と頭を悩ませる、あるいは考えることを放棄したくなるような会話かもしれません(笑)
どうすれば、こうした緊迫した会話において、本音で話し合いながら、望ましい解決策へと結びつけ、望ましい関係を維持・構築することができるのでしょうか。
もちろんそれぞれの人によってストレスを感じる会話の場面は異なるでしょうし、失敗する要因も違っています。
こうした場面で、あなたが取ってしまいやすい行動を知ることから始めれば、改善のためになすべきポイントもはっきりします。
本書には「ストレス時のスタイルテスト」という簡易的にあなたの行動パターンを知り、どのような点から重点的に改善を図っていけばよいかを示してくれます。
僕は全方位的に改善すべき点が見られるという結果なのですが…orz
そんな僕は、とくに「本音で話し合えるようになるために改善すべきポイント」をまとめてみました。
その1. 自分から始めよう
ダイアローグの原則その一は、自分から始める、である。始まりは自分の内面からだ。自分自身を正しく理解していなければ、適切なダイアローグはできない。会話が緊迫してくると、使いなれたコミュニケーションのやり方を、無意識に使ってしまうからである。(p.60)
先に挙げたスタイルテストの結果を見ると、僕は無意識のうちに「沈黙」という手段を選択してしまう傾向があるようです。
言われてみれば、確かに思い当たる節があります……。
このコミュニケーション手段は「ダイアローグ」からはほど遠い結果を招くことも明白ですから、かなり意識しなければいけません。
その2. 自分が本当に欲しいものに集中しよう
最初の動機に立ち返ってダイアローグを続けるには、まず目下のやり取りから離れて自分を見つめなくてはならない。客観的に自分を見つめて自問するのだ。「今、自分は何をしているのか。今の行動の根底にある動機は何か」(p.70)
頭では分かっているつもりですし、事実、準備段階やシミュレーションでは根底の動機や達成したい目的を常に意識するはずです。
それが、どうしてできなくなってしまうのでしょう…。
たいていは、悪い意味で議論に熱くなりすぎてしまうことが原因ではないかと思っています。
本音を行き交わせながらも、客観的な自分をどこかに持っておくことを意識しなければいけません。
その3. 自分が生んだ感情に働きかけよう
ダイアローグに長けた人は、やり方がまったく異なる。感情に支配されることがなく、しかし感情を隠しもしない。感情に働きかけて感情を支配するのだ。(p.166)
「あいつがあんなことを言うから…」と、熱くなった自分を振り返るとき、感情が暴走した原因を他者に求めてしまいがちです。
しかし、アルボムッレ・スマナサーラさんの『怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉』でもそうでしたが、感情を生み出すのはあくまでも自分だということをもう一度思い起こす必要があります。
同書の場合は「感情を支配する」とはまた少しニュアンスが違いますが、自分の内に沸き起こっているこの感情は、ほかの誰でもない自分自身が生み出したものだということを明確に意識すれば、それだけでどこか冷めてしまい、熱くなりすぎることもなくなりそうです。
その4. こじつけのストーリーに注意しよう
小さな裏切りであっても、私たちはこじつけのストーリーを創る。自分の過ちを認めるつもりがなく、自分の行動を変えるつもりもないときには、他人の失敗や自分の無実、自分の無力さをわざと誇張する。こじつけのストーリーは、結果よりも自己正当化が優先されたときに創られる。本当の目的は自分を正当化することではないのに、あたかもそれを求めているがごとく行動するのだ。(p.189)
他人が「こじつけのストーリー」を創っていることにはとてもよく気がつくのですが、本書を読み進めるうちに自分もそうだったと思い知らされて愕然としました。
そして、こうした「こじつけのストーリー」を冷静に思い返しますと、確かに本書で言われるようにどこか不完全で欠落した部分があるものです。
その場ではなかなか難しいことかもしれませんが、いったん立ち止まってでも、自分が本当に欲しいものに立ち返らなければいけません。
その5. 「だからそう言ったのに」を禁止しよう
全員で決定したことがうまくいかないときもある。そんなときに、以前は賛成していた人が(おそらく第二希望か第三希望だったのだろうが)「だからそう言ったのに」と態度を一転することはないだろうか。周囲にとっては、これほどうんざりするものはない。グループとして決定をしたら、失敗したときにこそ決定を支持しなくてはならない。(p.285)
これもよくあることです(汗)
特にビジネスにおいて上の人の意見で物事が決まった場合に、往々にして(陰で)言い出す人がいますが、確かにそんなチームはいい雰囲気にはなりえません。
(逆に、チームがまとまっているときにはそういうことを言い出すこともないですね、そういえば。)
意思決定プロセスの問題も絡みますが、そういうことを言い出す人がいたらきちんと指摘していかなければいけませんね。
その6. 自分が行動しよう
あなたがチーム・メンバーのことを無責任だと感じているのなら、感じていることを相手に指摘するのはあなたの責任だ。(p.324)
先の「その5」とも絡みますが、チームのメンバーのよくない点を指摘することは大切です。
誰かがしてくれる、リーダーがやってくれる、では決してよいチームにはなりえません。
(そもそもリーダーが間違っている、よくない行動をとることだってあるはずです。)
若い人には(特に大企業では)心理的なハードルもあるかもしれませんが、指摘しあえるようになるとチームの雰囲気が変わることを実感できるはずです。
その7. ダイアローグの鍵は自分だと肝に銘じよう
私たちはダイアローグにのってこない相手をやり玉にあげて、相手の人間性を非難することがある。しかしこれは問題の本質を見落としている。相手が真剣に話したがらないのは、話をしても良いことはないと考えているからだ。(p.332)
これまでに挙げてきたポイントとも共通することですが、なんにせよ、原因を相手に求めてはいけないということだと理解しました。
自分が変えられるのは自分の行動だけ、ということは様々なビジネス書で学び、十分に頭に叩き込まれているはずです。
自己正当化は「こじつけのストーリー」です。
僕の場合、真剣に話したがらない側になることが多かったような気もしますが、そんな自分を正当化しないことが第一歩になるようです。。。
その8. 悔やむくらいなら謝ろう
言い過ぎてしまったら謝ろう。言ってしまったことはどうすることもできないが、謝ることはできる。それからあなたの行動へのプロセスを告げるのだ。(p.347)
本音での話し合いができていると、つい熱くなって感情が暴走してしまい、言い過ぎてしまうことがあります。
悔やんでいても仕方がないので、素直に自分の非を認めて謝るという当たり前の行動が大切です。
まあ、謝ればいいということで何度も繰り返してはいけないのは言うまでもありませんが。
僕は、謝るタイミングを逃すと引きずってしまうタイプなので(そして引きずっていることがいくつかありまして…)、特に気をつけなければいけません。
僕は、コミュニケーションを苦にしないタイプだと自分では思っていましたが、知らず知らずのうちに本音を避け、ダイアローグに至らないところで処理をしてきただけなのかもしれません。
考えてみればそれは非常に残念なことです。
特に、それがプライベートの場面では甘えもあって、ダメな自分が色濃く出ていたのではないかと、思い至らされました。
パートナー同士がお互いに相手を思いやって意見をしてあげることを止めてしまったら、一生の親友でありコーチである人を失ってしまうことになる。お互いのコミュニケーションがより充実するように改善できる、計り知れない機会を失うことがないようにしよう。(p.323)
「本当の厳しいことを言ってくれるのは家族だけ」という言葉は真実です。
常にいてくれるということに甘えて、耳を塞いだり、口を閉じたりしてきた自分に気がつけたのは大変よいことでした。
一家に一冊、パートナーがお互いに読むとよい一冊だと思います。
※ 本書は本が好き!を通じて出版者の幻冬舎様より献本いただきました。厚く御礼申し上げます。
■ 関連リンク
開発企業: VitalSmarts
日本代理店: スマートワークス
■ 基礎データ
著者: ケリー・パターソン、ジョセフ・グレニ―、ロン・マクミラン、アル・スウィツラ―
訳者: 本多佳苗、千田彰
出版社: 幻冬舎ルネッサンス 2010年9月
ページ数:386頁
紹介文:
悪い組織であれば、結果を出せない人は初めのうちは無視され、やがて異動させられる。優秀な組織なら上司が問題を解決する。最高の組織では、誰かが問題行動を起こすと、別の誰かが役職に関係なく躊躇せずに問題を指摘する。
高い生産性を実現する鍵は、組織のあらゆるレベルで交わされる会話の質だった。
幻冬舎ルネッサンス
売り上げランキング: 83618
■ 本文中で紹介した書籍に関する書評記事
■書評■ 怒らないこと (2010年5月20日)
■ 他の方の書評記事
知識をチカラに:
『ダイアローグスマート 肝心なときに本音で話し合える対話の技術』
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- テーマ:書評
- ジャンル:本・雑誌
- カテゴリ:コミュニケーション
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