数年前『
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか 』という新書が話題になりました。
当ブログをお読みいただいている方のように、普段からビジネス書や経営関連の話題などに関心のある方であればご記憶にある方も少なくないでしょう。
当時、上場会社の経営企画チームでリーダーを務めていた僕にはかなりグサっとくる内容の本でしたし、すぐに部下にも共有し、僕ら自身のチーム、会社をこうした状態から変えていくにはどうしたらいいのかを考えたものです。
そうした際に挙がってくるのは、やはり「コミュニケーション不足」を指摘する声です。
特に若手同士や同性同士での間のコミュニケーション不足を指摘する声もないとは言いませんが、圧倒的に不満のやり玉に挙がるのは「経営層・上司との間のコミュニケーション不足」です。
もちろん「上司」であった僕についても例外ではなかったわけですが(汗)、それを面と向かって言える関係ならまだましだったのかもしれませんね。
上司の側にも言い分はいろいろあると思います。
当時の僕で言えば、物理的に忙しくて在席している時間が少なかったという状態は事実としてあったわけですが、当の部下からすれば「いつも席にいなくて相談ができない」ということも不満の種なのですから「忙しい」ことを言い訳にすることなど言語道断なのです。
こういう状況のビジネスパーソン(上司)の方は多いのでしょう。
チームマネジメントなどを扱うビジネス書の多くで「コミュニケーションのための時間を確保しましょう」ということが説かれています。
しかし、実は問題の本質はそこではありません。
時間を確保した先にある「コミュニケーションの中身」こそが重要なはずです。
僕自身の経験を振り返っても、反省すべき点ですが、きちんと対話ができたと思える部下とそうではなかった部下がいました。
本書を読んで「そうだったのか…」と、僕自身の至らなかった点に思い当たる節がありました。
そこで、自省の意味を込めて、部課長としての部下と「対話」するためのポイントをまとめてみました。
Point1 対話の成果を意識すること 対話とは、双方が真摯に心を開き、意見や観を交換し、「1+1=3」という新しい次元にたどり着こうとする共創作業です。その意味で、漫然と話を交わす会話とは異なります。(p.8) 部下とはよく話しているから大丈夫、という上司の方々、何か勘違いしていませんか?
「1+1=3」を生み出すためには、上司の側から出す「1」と部下の側から出す「1」がぶつかり合うことが必要です。
僕の経験を振り返ると、うまく対話ができていなかった要因のひとつに、部下のことを聞いてあげようと思うあまり、僕自身から「1」をぶつけられていなかったな…という気がします。
Point2 部下の意識を押し広げるように心がけること 部課長は、こうした「仕事」が持つ意味の広がりをしっかりと自分の中で描き、部下がどの意味合いで仕事をとらえているかを把握して対話せねばなりません。そして、部下のとらえる仕事を、長期的な時間軸・湧き上がってくる動機軸の方向へ押し広げてやることが大事です。(p.88) 対話がすれ違う原因の一つに、同じ言葉を使っているけれど思っている意味が違うということがあります。
これは色々な場面で起きることですが、僕なども中途採用ばかりの職場で働いていると、それぞれのバックボーンによって同じ単語でも違った意味合いで使っていたなんてことはしょっちゅうです。
伝えたと思ったことが伝わっていなかったり、聞いたと思っていたけれど全然違っていたりといったことが何度も起これば、信頼関係を築くことは難しいでしょう。
特に「仕事」については要注意です。
部課長が語らなければならない、とても大切なことなのですが、そもそも上司と部下の間で「仕事」の捉え方は違うものです。
できる限り、部下の「仕事」に対する意識・動機をそれを「長期的に取り組むべき使命=ライフワーク」だという方向に広げて上げられる様な対話をしてあげたいところです。
まあ、上司自身がそう思っていないなんていうのは大きな問題ですので、まずは自分自身の「仕事」観からきちんと見つめ直す必要はありますが。
Point3 対話の「3C」を身につけること 部課長は、 1. 状況をつかみ、その「文脈」に乗せて、 2. 語るべき「内容」を持ち、 3. もろもろの「振舞い」を通して、 部下に対し意思疎通を図る。(p.137) 「対話の3C」なんて言うと、流行りのフレームワークみたいでかっこいいですね(笑)
「
Context 」「
Contents 」「
Conduct 」の3Cです。
特に、本書で繰り返し説かれているのが、2番目のContents(内容)です。
対話がうまく成立しない要因は、上司である僕たち側が「語るべき内容」をぶつけられていない、ひどい場合は持っていないということにあるのです。
逆に、これができていた部下との間では、信頼関係が築けていたんだな…とも。
Point4 未来を語ること この手の質問に明快な答えをすぐに引き出すことはできませんが、そのやりとりの過程こそが両者の関係構築にとって大事なものです。漠然とでもいいですから未来のことについて語る、これがいいのです。(p.187) 「将来何がしたい?」「この事業の将来性についてどう思う?」など、未来について語り合うきっかけとなるような質問を投げかけ、上司としても真摯に語り合うということが大切です。
何もこのために特別に時間を取る必要はなくて、ランチタイムをうまく活用すればいいのです。
普段の何気ない会話の中に、こうした対話のきっかけを織り交ぜることで、より対話の効果が上がるのではないかと思います。
※ 参考:
ランチで夢をかなえる人のファーストステップ ■書評■ 『アライアンス・ランチの教科書』 (2010年9月26日)
ちなみに、僕は「語る」方は実践していますが、きちんと聞けてあげているか…という点にやや疑問が残るので、もう少し「聞く」方を意識しようと思います。
「上司」としての自分を見つめ直すいいきっかけになると思います。
その上で、読んだその日からすぐに「対話」の質を変えていくことは決して難しいことではないと思います。
一般的に言われることでもありますが、対話がうまくいかない原因は必ず自分自身に見つかります。
僕たちは「上司」なのですから、こちらから一歩踏み出して変化を生み出しましょう。
■ 関連リンク 著者ブログ:
人財教育コンサルタントの職・仕事を思索するブログ ■ 基礎データ 著者: 村山昇
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010年8月
ページ数: 232頁
紹介文:
あなたは部下に「仕事とは何か?」を語れますか―ギスギスした職場を変えるコミュニケーションの処方箋。今日から実践する、5つの対話、5つの観、5つの心構え、5つの技法、5つのルール。部長・課長が起こす対話によって仕事の厳しさを「個人の成長」と「組織の発展」に変えることができる。
村山 昇 ディスカヴァー・トゥエンティワン 売り上げランキング: 103278
■ 他の方の書評記事 一流への道:
One team under the vision.【書評】村山 昇(著)『個と組織を強くする 部課長の対話力』(ディスカヴァー21) ☆ビジネス書読みあさり☆:
今年144冊目『部課長の対話力』
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