再び勝間和代を目指す方法 -書評- プロフェッショナルを演じる仕事術
- 2011/12/11
- 15:00

多くの場合、そこから何かを得たい、という目的やら意思やらを持っているのではないでしょうか。
それは、今目の前にある問題を解決するための何かかもしれないし、生活をもっと便利にするためのノウハウかもしれないし、長期的な成長を目指した何かかもしれません。
最近少しおとなしいようにも感じますが、数年前、勝間和代さんが一つのブームを作り出しました。
勝間和代さんをグルとして崇める人々を「カツマー」と呼んでいましたよね(今も呼ぶのかな?)。
しかし、カツマーから第二の勝間和代さんは生まれてはいません。
なぜでしょう?
「努力をすれば誰でも成功できる」という考え方自体が幻想なんだという主張もありますが、本書を読めば、また違った角度からその要因に思い当たることができます。
そして、もしなりたいのであれば、第二の勝間和代さんになるためのヒントもまた見えてくるでしょう。
誰かがその道を目指すことをお薦めしようとも止めようとも思っていません。
ただ、本書でこんな記述を見つけたときに、頭の中に勝間さんのことが浮かんだのです。
どのプロフェッショナルから学ぶかを決めたら、その人を師匠としてすべてを受け入れる覚悟が必要です。すでに見てきたように、プロフェッショナルの能力は「行動フレームワーク」「思考フレームワーク」「精神フレームワーク」が統合されてでき上がっているために、「役に立ちそうな所だけマネしよう」と考えても、そんなに都合よくいきません。なぜなら"役に立ちそうな所"自体が素人には判断できないからです。(p.216)

勝間さんの情報収集術とか勉強法とかガジェットの使い方とか色々真似て。
著書には、なぜそうするのかということも書かれていたでしょうけれど、大部分の人は勝間さんの「行動フレームワーク」だけをなぞっていたのではないかと僕は思っています。
そもそも、勝間さんが成功(と呼ぶのかどうかは色々意見があるとは思いますが)したのは、何をやるかという方法よりも、端から見て極端で普通じゃないと思えるほどに徹底するという点によるのだと僕は思っているので、そこまで出来ない人は表面だけ真似ても勝間さんのレベルにはなれないはずなんです。
ここに書かれていますが、勝間さんに限らずプロフェッショナルと呼ばれる人たちというのは、そういう表に現れる「行動」の裏側にある、「思考」や「精神」こそがプロフェッショナルたる源となっているのです。
だからこそ本書は、大切なのは「思考フレームワーク」「精神フレームワーク」を身につける事であり、その為には真似て「演じる」ことが有効だと説いているわけです。
ただ、これは相当難しいことです。
最近の若い人には「これって何の意味があるんですか?」ということを口にする人が増えてきているように思います(もちろん、そういう人は昔からいたし、僕自身も言ったことがないわけじゃないですが)。
そういう疑問を発することが正しい場面もありますが、本書では、その人から学ぼうという場面に限っては間違っていると言います。
プロフェッショナルから学ぶのが難しいのは、私たちが何かを理解するときに必要な「原因」と「結果」の因果関係が分からないからです。だからこそ最後はマネするしかない(p.205)
僕が難しいなと思ったのは、そこまで師事・薫陶できる「プロフェッショナル」を見つけることです。
無条件で全てを真似て「演じる」対象を見つけることが出来るかどうか。
そのうえで、突き抜けた人たちを「演じ」きることが出来るかどうか。
(話題の『スティーブ・ジョブズ』を読みましたが、常人では、あの「精神フレームワーク」はとても到達できるとは思えませんね…)
それに加えて、大抵の人が持っているであろう「コンプレックス」とか「今ある自分を肯定する気持ち」を抑え込めるかどうかという点も、重要なポイントです。
この点は本書の中で再三にわたって登場します。
「良薬は口に苦し」「忠言は耳に逆らう」と言いますが、自分にとって最も必要で、そして本質的な学びほど、なかなか素直に受け入れる事ができません。その事に気づかない限り、大切な学びのチャンスを逃してしまうのです。(p.6)
多くの場合、自分を成長させるヒントは「自分がその通りだ」と思っている事ではなく、自分では「それは間違っている」「それは納得できない」と思っている情報の中にあるのです。(p.73)
コンプレックスが強い人ほど、自分より優れたものや、自分が理解できない事に直面すると、そこから学ぼうとするより、否定しようとする気持ちが無意識に働いてしまうからです。(p.144)
「変わらない人」は、よい意味でも悪い意味でも、やや冷めた目で見ながら勉強を要領よくこなそうとします。そしてプライドが高いだけに、自分の考えとは違う価値観や自分より優れたものを簡単には受け入れようとはしません。(中略)このような「変われない人」がいる一方で、「変わる人」はどんな知識でもスポンジのように吸収します。「これは違う」「私ならそうしない」と思う事でも、一旦飲み込んで咀嚼しようとします。自分の方が正しいなら、"成功した人"より自分の方が成功していなければならないのに、現実は違うという事実をよく分かっているからです。(p.155)
月並みな答えですが、結局のところ「演じる」というのは方法の一つであって、何かを学び、成長するために大切なのは、「素直さ」と「謙虚な気持ち」なんでしょうね。
対象となるプロフェッショナルを見つけるのが難しい…とか言って「演じる」ことをしてみようとしない僕には、この辺が不足しているのかもしれません。。(汗)
※ 本書は、R+(レビュープラス)様より、優先レビュアーとして献本いただきました。
■ 関連リンク
著者Twitter: @wakabayk
著者ブログ: 若林計志 東京漂流記
著者Facebook: 若林計志
■ 基礎データ
著者: 若林計志
出版社: PHP研究所(新書) 2011年11月
ページ数: 240頁
紹介文: 「プロフェッショナル」として認められるビジネスマンは、どのようにして自らの「成功ストーリー」を描き、それを演じているか。“大前研一監修の海外MBAプログラム”責任者が、心理学的な要素を加えた最新経営学のノウハウをわかりやすく解説。さらに、孫正義、藤田田氏ら「プロフェッショナル」の様々なエピソードを紹介。その行動・思考を徹底分析し、スキルアップに成功する技術を伝授する。
PHP研究所
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■ 併せて読みたい
サラリーマンという特権階級に身を置いてプロフェッショナルを目指しているのなら、こちらの本もお薦め。
対象年齢は20代の若手ビジネスパーソンで、30代前半ならギリギリ大丈夫かなという印象です。
プレジデント社
売り上げランキング: 11
こちらはプロフェッショナル論の古典と言ってもいい一冊。
「新入社員に薦めたい~」的な特集の定番でもありますし、基本書として押さえておきたいところです。
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 620
尊敬する人に師事・薫陶して、まるごと受け入れるというのは伝統芸能の世界に通じる考え方ではないでしょうか。
一流の落語家たちの前座時代の話からは学ぶところが多いでしょう。
日本放送出版協会
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- カテゴリ:人生論・人物伝
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