神棚のない会社の社員が戯言など書いてみる -書評- なぜ儲かる会社には神棚があるのか
- 2012/04/16
- 15:00

本書については、ちょっと気持ちを落ち着けるためにも一度まとめておきます。
そもそもお薦めしたい本の書評すら書けていないというのに、
それを差し置いてでも書いておこうと思わせてしまう本書の力は、ある意味凄いですけどね。
まあ、神棚のない会社に勤めるサラリーマンの戯言と思って読み流していただければ(笑)
まずは僕が感じた本書の要点をさらっと。
経営には謙虚さだとか感謝の気持ちだとか、そういったものが大切だよということかなと。
そこに「神棚」の存在は必ずしも必要ではなくて、
個人的には、儲かっている会社はトイレが綺麗だ、という方が実感として腑に落ちる感じがしますが、
どちらもその根底にあることは共通しているし、至極まっとうで当たり前なことですよね。
『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』では、
衰退の第一段階は「成功から生まれる傲慢」だと説かれていました。
本書に当てはめてみれば、「神棚」を祀って「神様、お天道様がみている」という意識を持てば
どんなに成功したとしても奢り高ぶって傲慢になることなく、謙虚さや感謝の気持ちを忘れないでしょうから、
衰退の第一段階に足を踏み入れてしまうこともないだろう、ということになりそうです。
じゃあ、本書の何がそこまで僕の気持ちをかき乱したのかと言うと、
冒頭でも書いたように、僕の勤めている会社には神棚がない(そして僕自身が「神棚を祀りましょう」と社長に進言するつもりも毛頭ない)からかもしれませんが(笑)
冷静に考えてみると、まえがき部分(はじめに)で引っかかってしまっているようです。
(1)著者が「神棚マイスター」として神棚の販売をしている
本書の要点を絞っていくと、「神棚」を祀ることの必然性がどうしても腑に落ちません。
商売ですからポジショントークなのは仕方ないのですが、どうしても身構えてしまいますよね。
手数料稼ぎのためにリスクの説明はそこそこに、メリットばかり説明して投信を売りつけようとしているセールストークを聞かされているような気持ちになります。
同じことをアナリストの方とかコンサルタントの方とかが書いていたら、もう少し違ったんでしょうけどね。
ちなみに、本書には以下のような記述もあり、セールス臭が色濃く漂ってきます。
調べる気力がないのでイメージで申し訳ありませんが、
大きくなればなる程お値段も高くなりそうな気がしませんか?(笑)
(2)倒産した企業の85%が、会社に神棚を祀っていなかった?
何度かブログでも書いたことがありますが、僕は勤めている会社が倒産した経験があります。
それも、単に倒産した会社にいた、というわけではなく、倒産手続きの実務担当者として働いたことがあります。
「倒産した企業の85%が、会社に神棚を祀っていなかった」というのは、
著者の調査ではなくて、信用調査会社の社員の報告を基にしているようですが、
倒産手続きの中や、その後数年間の中でも、信用調査会社が「神棚の有無」を聞いてきたことなどありません。
もちろん、僕の経験は一度きりのことなので、それが全てではないことは重々承知していますが、一体この数字は何なんだろうかと。
通常企業の何パーセントに神棚が祀られているのか、とか
神棚を祀っている会社の何パーセントが儲かっているのか、とか
そういった比較対象なしに、この数字だけを出されてしまうと、上記のポジショントークと相俟って誠実さが感じられません。
重箱の隅のようで申し訳ないとは思いつつも、
この数字をフックにして話を始めている以上、どうしてもスルーできませんでした。
(3)銀行の融資担当者の多くが、融資するかどうかを決めるポイントの一つに、会社に神棚があるかどうかを挙げている?
まあ、これも重箱の隅なんですけど。
僕は企業融資の担当者としても数年働いたことがありますが、神棚の有無は審査ポイントになっていませんでした。
僕が所属していた組織がたまたま審査ポイントにしていなかっただけなのかもしれませんから分かりませんけどね。
Amazonレビューを見ると、神棚を見るように指導された経験のある方もいらっしゃるようですし。
僕の場合、審査ポイントとして重視はしていませんでしたが、
工場が整頓されているか、とか、本社の玄関やトイレが綺麗にされているか、といった点は気をつけていましたね。
会社の規律というか内実が出てくる部分でもありますし。
そもそも神棚を祀られている会社の方は、どこに祀られているんでしょう?
お客さまや銀行の融資担当者から目につく、玄関とか応接のようなところに祀るのが一般的なんですかね。
本書では、場所がなければサイドボードやロッカーの上でも構わないと書かれていますが、
そんなところに祀ったら、大事な審査ポイントなのに融資担当者の目に触れないんじゃないかと心配になります。
色々と書きましたが、実はよく分かっていなかった「神棚の祀り方のルール」など、
日本人として知っておいて損はない知識を得ることもできたので、それはそれで有難い点でした。
ただ、一般的には本書は中小企業のオーナー向けの内容でしょうね。
僕と同じようなサラリーマンの方が読んで「うちの会社には神棚がないじゃないか。早速神棚を祀ろう」と行動するイメージは、ちょっと湧きにくいです。
しかし、既に神棚が祀られている会社にお勤めの方は、本書を読んで自社の神棚に今一度気を配ってみてはいかがでしょう。
せっかく祀られているのであれば、きちんとしておきたいですよね。
※ 本書はあさ出版の吉田様より恵贈いただきました。ありがとうございました。
著者: 窪寺伸浩
出版社: あさ出版 2012年3月
ページ数: 182頁
紹介文: 「倒産した企業の9割が、会社に神棚を祀っていなかった」「銀行の融資担当者の多くが、会社に融資するかどうかを決めるポイントに、会社に神棚があるかどうかを挙げている」
次々に語られる、儲かっている会社に神棚がある、きわめて合理的な理由
中小企業経営のカリスマ、小山昇氏が推薦!
神棚が呼び寄せる、すべてがうまくいく”習慣”とは?
ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~: 【読書日記】「ありがとう」感謝が招く好循環-「なぜ儲かる会社には神棚があるのか」
一流への道: 見えない力が職場を変える【紹介】窪寺伸浩(著)『なぜ儲かる会社には神棚があるのか』 (あさ出版)
最近類書を読んでいないので、ちょっと古い本で申し訳ありませんが、
本文中で「アナリストの方とかコンサルタントの方とかが書いていたら」と書いた際に頭にあった本を挙げておきます。
小宮さんの本は「経営」とはちょっと軸が異なりますが。。
経営には謙虚さだとか感謝の気持ちだとか、そういったものが大切だよということかなと。
そこに「神棚」の存在は必ずしも必要ではなくて、
個人的には、儲かっている会社はトイレが綺麗だ、という方が実感として腑に落ちる感じがしますが、
どちらもその根底にあることは共通しているし、至極まっとうで当たり前なことですよね。

衰退の第一段階は「成功から生まれる傲慢」だと説かれていました。
本書に当てはめてみれば、「神棚」を祀って「神様、お天道様がみている」という意識を持てば
どんなに成功したとしても奢り高ぶって傲慢になることなく、謙虚さや感謝の気持ちを忘れないでしょうから、
衰退の第一段階に足を踏み入れてしまうこともないだろう、ということになりそうです。
じゃあ、本書の何がそこまで僕の気持ちをかき乱したのかと言うと、
冒頭でも書いたように、僕の勤めている会社には神棚がない(そして僕自身が「神棚を祀りましょう」と社長に進言するつもりも毛頭ない)からかもしれませんが(笑)
冷静に考えてみると、まえがき部分(はじめに)で引っかかってしまっているようです。
(1)著者が「神棚マイスター」として神棚の販売をしている
本書の要点を絞っていくと、「神棚」を祀ることの必然性がどうしても腑に落ちません。
商売ですからポジショントークなのは仕方ないのですが、どうしても身構えてしまいますよね。
手数料稼ぎのためにリスクの説明はそこそこに、メリットばかり説明して投信を売りつけようとしているセールストークを聞かされているような気持ちになります。
同じことをアナリストの方とかコンサルタントの方とかが書いていたら、もう少し違ったんでしょうけどね。
ちなみに、本書には以下のような記述もあり、セールス臭が色濃く漂ってきます。
神棚の大きさは、経営者の志の大きさに比例します。事業に対する思い、事業を通じて社会にいかに貢献するかといった志が大きければ大きい程、見えない力に対する思いも強くなります。そのため、神棚も大きなものになるのです。(p.102)
調べる気力がないのでイメージで申し訳ありませんが、
大きくなればなる程お値段も高くなりそうな気がしませんか?(笑)
(2)倒産した企業の85%が、会社に神棚を祀っていなかった?
何度かブログでも書いたことがありますが、僕は勤めている会社が倒産した経験があります。
それも、単に倒産した会社にいた、というわけではなく、倒産手続きの実務担当者として働いたことがあります。
「倒産した企業の85%が、会社に神棚を祀っていなかった」というのは、
著者の調査ではなくて、信用調査会社の社員の報告を基にしているようですが、
倒産手続きの中や、その後数年間の中でも、信用調査会社が「神棚の有無」を聞いてきたことなどありません。
もちろん、僕の経験は一度きりのことなので、それが全てではないことは重々承知していますが、一体この数字は何なんだろうかと。
通常企業の何パーセントに神棚が祀られているのか、とか
神棚を祀っている会社の何パーセントが儲かっているのか、とか
そういった比較対象なしに、この数字だけを出されてしまうと、上記のポジショントークと相俟って誠実さが感じられません。
重箱の隅のようで申し訳ないとは思いつつも、
この数字をフックにして話を始めている以上、どうしてもスルーできませんでした。
(3)銀行の融資担当者の多くが、融資するかどうかを決めるポイントの一つに、会社に神棚があるかどうかを挙げている?
まあ、これも重箱の隅なんですけど。
僕は企業融資の担当者としても数年働いたことがありますが、神棚の有無は審査ポイントになっていませんでした。
僕が所属していた組織がたまたま審査ポイントにしていなかっただけなのかもしれませんから分かりませんけどね。
Amazonレビューを見ると、神棚を見るように指導された経験のある方もいらっしゃるようですし。
僕の場合、審査ポイントとして重視はしていませんでしたが、
工場が整頓されているか、とか、本社の玄関やトイレが綺麗にされているか、といった点は気をつけていましたね。
会社の規律というか内実が出てくる部分でもありますし。
そもそも神棚を祀られている会社の方は、どこに祀られているんでしょう?
お客さまや銀行の融資担当者から目につく、玄関とか応接のようなところに祀るのが一般的なんですかね。
本書では、場所がなければサイドボードやロッカーの上でも構わないと書かれていますが、
そんなところに祀ったら、大事な審査ポイントなのに融資担当者の目に触れないんじゃないかと心配になります。
色々と書きましたが、実はよく分かっていなかった「神棚の祀り方のルール」など、
日本人として知っておいて損はない知識を得ることもできたので、それはそれで有難い点でした。
ただ、一般的には本書は中小企業のオーナー向けの内容でしょうね。
僕と同じようなサラリーマンの方が読んで「うちの会社には神棚がないじゃないか。早速神棚を祀ろう」と行動するイメージは、ちょっと湧きにくいです。
しかし、既に神棚が祀られている会社にお勤めの方は、本書を読んで自社の神棚に今一度気を配ってみてはいかがでしょう。
せっかく祀られているのであれば、きちんとしておきたいですよね。
※ 本書はあさ出版の吉田様より恵贈いただきました。ありがとうございました。
■ 基礎データ■
著者: 窪寺伸浩
出版社: あさ出版 2012年3月
ページ数: 182頁
紹介文: 「倒産した企業の9割が、会社に神棚を祀っていなかった」「銀行の融資担当者の多くが、会社に融資するかどうかを決めるポイントに、会社に神棚があるかどうかを挙げている」
次々に語られる、儲かっている会社に神棚がある、きわめて合理的な理由
中小企業経営のカリスマ、小山昇氏が推薦!
神棚が呼び寄せる、すべてがうまくいく”習慣”とは?
■ 他の方の書評記事
ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~: 【読書日記】「ありがとう」感謝が招く好循環-「なぜ儲かる会社には神棚があるのか」
一流への道: 見えない力が職場を変える【紹介】窪寺伸浩(著)『なぜ儲かる会社には神棚があるのか』 (あさ出版)
■ 併せて読みたい
最近類書を読んでいないので、ちょっと古い本で申し訳ありませんが、
本文中で「アナリストの方とかコンサルタントの方とかが書いていたら」と書いた際に頭にあった本を挙げておきます。
小宮さんの本は「経営」とはちょっと軸が異なりますが。。
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