「白熱」を生み出すために必要なものは? -書評- ハーバード白熱日本史教室
- 2012/06/25
- 15:00

高校時代、世界史と日本史を選択する際に、僕は迷わず世界史を選択しました。
当然、大学受験も世界史で受験しているので、日本史の知識はものの見事に欠落しています。
(センター試験の模擬試験で、遊びで日本史を選択したことがありますが、半分も回答できませんでしたねえ・・・)
そんな僕ですが、最近になって海外に行く機会が増え、
自分の国の歴史くらい知っておかないといけないよなあ、と思うようになっています。
それが本書を手に取った理由の一つでもありますが、
最大の理由は、やはり「ハーバード」「白熱教室」という心奪われるタイトルなんですけど(笑)

サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』が思い浮かぶのではないでしょうか。
しかし、本書の著者である北川さんは、なんとまだ30代前半!
ハーバードという一流大学で白熱教室を展開されているというイメージからはかけ離れた若さです。
そんな北川さんが、一体どうして白熱した講義を続けていられるのでしょうか。
先に書きましたが、北川さんのプロフィールを簡単にご紹介しておきましょう。
北川さんは1980年生まれ。
もともとはカナダの大学で数学を専攻されていたのに、
とあることがきっかけで大学院では日本史を専攻することに。
高校時代に海外旅行で初めて訪れたカナダにどうしても行きたくてカナダの大学を受験したというエピソードからも、
北川さんの思い立ったらやり遂げるという行動力は常人のそれを軽く超えていると感じてしまいますが、
それこそが「白熱教室」を生み出す原動力なのかもしれません。
北川さんが既存の日本史講義を受講して、どうしても変だと思ったことは、それが「サムライ」中心だったことだそうです。
まともに日本史の勉強をしていない僕からしても、「サムライ」中心の日本史と聞くと相当違和感がありますが、
北川さんの違和感は、そこに女性の視点が全く欠けていること。
「サムライ」だけではなく、「Lady Samurai」の存在も日本史を語る上で欠いてはいけない、誰かが伝えなくてはいけない…
その想いが基になった講義が北川さんの「Lady Samurai」であり、
そうした想いがあったからこそ、ハーバードのエリートたちを熱狂させる講義になったのです。
もう一つ、北川さんは「KYOTO」という講義も開講されています。
こちらも「Lady Samurai」に負けず劣らず学生たちを熱狂の渦に巻き込んでいるようです。
授業自体はハードそうですが、こんな日本史講義なら受けてみたいかも!と思わせるもので、講義が白熱することも納得の内容です。
(講義の内容などはネタバレを自重して本書に譲ります。)
北川さんは3年目にして、ハーバード大学の「フェイバリット・プロフェッサー」の一人にも選出されたそうです。
これは、学生たちの投票で決まるもので、なんと卒業アルバムの冒頭ページにでかでかと写真とメッセージが掲載されるとか。
実物は見たことありませんが、自分たちの卒業アルバムの冒頭を飾るわけですから、学生たちも相当真剣に選ぶはず。
学生たちが白熱した証がここにも現れているわけですね。
ちなみに、北川さんの考えたメッセージがまた素晴らしい。
熱意だけじゃなく、こういうセンスのよさも講義内容に反映されているんだろうなあ、と思わずにはいられません。No proof needed; your possibilities are ∞.
僕が目論んだような、欠落した日本史の知識を本書で補おう、という目的には向いていませんが、
そこからは、既成の見方に疑問を持つこと、疑問に思ったことを追求することの大切さを感じずにはいられません。
「白熱」の中心には、間違いなく北川さんの持つ「熱意」が存在しています。
それは、もちろん日本史に限られたことではなく、これも一つのイノベーションなんですよね。
純粋に日本史への興味を掻き立てられるだけではなく、生き方についても、学び考えさせてくれる一冊でした。
■ 基礎データ
著者: 北川智子
出版社: 新潮社(新潮新書) 2012年5月
ページ数: 190頁
紹介文: 少壮の日本人女性研究者が、ハーバード大学で日本史を大人気講座に変貌させた。歴史の授業に映画作りや「タイムトラベル」などの斬新な手法を導入。著者の熱に感化され、学生たちはいつしか「レディ・サムライ」の世界にのめり込んでいく―。「日本史は書き換えられなければならない」という強い使命感のもと東部の有名大学に乗り込み、「思い出に残る教授」賞にも選ばれた著者が記す「若き歴史学者のアメリカ」。
■ 併せて読みたい
これを機に日本史についても少し学びなおしておこうかと。
日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
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網野 善彦
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また、ふと本棚を見てみれば「ハーバード」を冠する書籍が何冊か。
どの本も知的好奇心を掻き立ててくれたり生き様を考えさせてくれたり、お勧めできる本たちです。
ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)
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デイジー・ウェイドマン 幾島 幸子
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ハーバードビジネススクールが 教えてくれたこと、教えてくれなかったこと 起業した卒業生3人の10年間
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ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ 世界を変えてみたくなる留学
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ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方 【徳間文庫】
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