文法力なくして英語力なし -書評- 会話力がアップする英文法のレッスン
- 2015/01/08
- 00:00

ただ、ある程度目処が立ってくると、語彙はもちろんのこと、文法的なバックボーンをきちんとしておかないと早々に限界が来ることも実感しています。
マレーシアのようにそもそも母語が英語ではない国にいると、周囲のマレーシア人も、ある程度話せる人でも結構文法にはいい加減だったりしますが(特に時制や人称がいい加減)、やはりきちんと教育を受けている層の人たちの英語は違います。
日常生活はともかくとして、仕事で使う以上は、こちらもきちんとした英語を話せるようになりたいと思うわけです。
そんな時に「会話力がアップする」なんてタイトルを見たら読んでみないわけにはいきません。
これで僕の会話力が即座にアップするとは思いませんが、底上げを図るにはなかなか良い内容でした。
本書は、受験英語では疎かになりがちな背景部分からきちんと押さえましょうという趣旨の基に講義形式で書かれており、何となく分かったつもりになっていたところが腑に落ちる内容です。
特に著者の田中先生は「コア」という概念を大切にされており、そういうところを押さえていくと、表面を暗記して繰り返すだけの英会話から一歩脱却できるというわけです。
色々と自らの英語を省みさせられるところがありましたが、以下の点は特に気をつけようかなと思わされました。
(1)冠詞
色々な文法書で解説されているので目新しいというわけではありませんが、日本人には馴染みのない感覚ですので、なかなか難しいというのが私の印象です。
話していると、つい「the」を連発してしまったりしますが、やたらと付けていいものではないわけです、当たり前ですが。
> theは「情報共有のしるし」
> 話し手だけが対象を特定できるのではだめで、相手も同じように特定できる場合のみtheが使える
英語だって誰かとコミュニケーションをとるための「ツール」なわけですから、相手のことをきちんと意識しないといけませんね。
(2)前置詞
様々な前置詞の使い分けも頭を悩ませるポイントです。
外国人が変な助詞の使い方をしていておかしな日本語に聞こえるように、僕ら(僕だけ?)の英語もおかしな前置詞の使い方をすることで、非常におかしな印象の英文になってしまっている可能性があるわけです。
> 前置詞のtoはface to faceだとかback to backのように「対象と向き合う」というのが本来の意味だ。「学校に行く」はgo to schoolだけどcome to school(学校にやってくる)とも言うね。視点の置き方は違うけど、「学校と向き合う状態になる」ということでは共通している。
> asに共通しているのは、「何か2つのものを対等の関係に置く」といった感覚だ。これがasのコア感覚だよ。
難しいのはofとかin/atとかですが、そちらの解説は本書でお確かめを。
ただ、前置詞のイメージがきちんとつかめると、会話力だけではなく、読解力も作文力も一段上のレベルに上がると思っていますので、ここは繰り返し確認したいところですね。
(3)助動詞
仕事の関係で英文の契約書を読むことが多いので、法律用語的な助動詞の使い方には慣れてきましたが、会話にそのまま使うと堅苦しいことこの上ない言葉になるのではないかと危惧しています。
数が多くないだけに、きちんと背景を汲んだ使い分けをできるようになりたい点です。
何でもかんでもCould you~?にしてしまっては味気ないですしね(通じることは通じると思いますけどね。困ってはいないですし)
> 現時点で話し手の判断に推量が入っていると、現在のことでも未来のことでもwillを使うことができる
> couldは過去のことというより、現在を語る表現で使うことが圧倒的に多い。とは言え、couldは過去形なので、現実の現在ではなく、仮想の現在の状況を表すという特徴がある。
受験英語だと、ひたすらwillをbe going toに置き換えるとか、そんなことばかり覚えていましたが、本来、話し手の意味合い的には違ってきちゃうわけです。
だからと言って僕は受験英語に否定的でもなく、それは立派な土台になるんだと思います。
本書を一読したからと言って明日から飛躍的に会話力がアップするなんてことはありませんし、気をつけようと思ったところで一朝一夕に変われるのであれば苦労はしないわけです。
これを端緒に日々積み重ねていくしかないのですが、田中先生が言われている下記の2点は意識しておくべきでしょう。
> 英文を読むときなどは、主語に注目した読み方をすると英語の発想・感覚を見につけるのに役立つと思うのでぜひ実践してほしい。
> 文法は、本物の英語テキストの中で見ていくとリアリティーが生まれ、文法学習もわくわくするものになるよ。
本書の例文も実際の本だったり講演から取られているものが少なくなく、そうしたものに意識的に取り組んでいくという、まあ王道を歩むのが結局一番の近道なのでしょうね。
なお、本書は「もう一度基礎からやり直そう」という方向けではないと感じました。
どちらかというと、一通り高校レベルの英語(英文法)を勉強しており、何となく分かった気にはなっているんだけど…という人向けのレベルだと思いますので、その点はご留意を。
頭打ち感が出てきたところで、もう一歩上に行きたい、という方には是非。
■ 基礎情報
著者: 田中茂範
出版社: NHK出版 2014年6月
ページ数: 131頁
紹介文: 「冠詞“a”はどんなときにつける?」「mustとhave toの違いは?」――英文法の素朴な疑問が、先生と生徒の対話ですっきり解決。複雑に思えていた英文法も、本質的な部分をとらえれば簡単に使いこなせるようになり、英会話も上達する一冊。NHK『英会話タイムトライアル』の好評連載が待望の単行本化。
■ 関連リンク
著者Twitter: @shigetanaka
■ 併せて読みたい
セイン先生のこちらの書籍も読み易くてためになりました。上記で取り上げたポイントと重複しているのですが、僕は複数読んだことでだんだんと腹に落ちていく感じがしています。こちらの方が敷居が低いと思います。
やり直し教養講座 英文法、ネイティブが教えるとこうなります (NHK出版新書)
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同じくセイン先生のこちらの書籍は動詞のイメージ掴みに非常に良いと思います。
本書の中で田中先生は『僕の基本的スタンスは「文法力なくして英語力なし」』とおっしゃられていますが、僕のこの考え方には賛成です。 同じスタンスの以下の書籍もお勧めです。
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最近、仕事の都合で海外で過ごす時間が長くなっています。
もともと英語が話せるわけでもないのですが、最低限のことは何とかなっていくもんだなあなんて思ったりもしています。
僕が滞在する時間が長い国の公用語が英語ではないから、ということもあるかもしれませんが
(それでも日本と違って、たいていの人は英語でコミュニケーションが取れますし、仕事は全て英語です)
驚いたことに、とにかく現地の人...
- 2015/01/08(00:20)
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