【書評】小さな会社のブランド戦略
- 2009/07/26
- 09:00

本書で、著者は「ブランド会社」とは「あなたのビジネスに関わるすべての人がファンになるような、研ぎ澄まされた経営をしている会社」であるとした。
そして、その為に重要なことは「ミッション(使命感)」が、そこで働くスタッフに共有されているか否かなのである。
「ミッションが大切である」ということについては、実は渡邉美樹氏が言っていることと根底は同じであるし、僕も再三に亘って書いてきた。
僕はサラリーマンだけれど、ブランディングのプロジェクトの経験もあるし、経営理念の策定の経験もあって、その重要性は多少なりとも実感値を持っていると思っている。
本書では、共感される「ミッション」を持ち、ファンに支えられている小さな会社の実例が沢山紹介されている。
もちろん、それぞれ素晴らしい会社なのだけれど、その中でも僕が気に入った会社(?)は、ロレンツォさんが経営する、イタリアの田舎の小さな生ハム屋さん。
ウェイティングリストには世界のVIPが名を連ね、2~3年待ちの状態になっているという。
しかし、どんなに偉い人が来ようと、いくらお金を積まれようと、優先して生ハムを売ったりせず、100%、一切の例外なく、すべてのお客様を平等に取り扱うと決め、それを守り通している。
さらに、年間1500本の生産が商品のクオリティを保つための最大の数字であると、自分のサイズを見定め、毎年その数だけ最高の生ハムを作り、適正な価格で販売し、商売に関わるすべての人と生きる喜びを分かち合い、家族との時間を何よりも大切にするという信念に基づいた経営が為されているのである。
このぶれない姿勢は、ロレンツォさんが明確な「ミッション」を持ち、生き方と働き方が一致しているが故のものであり、それが故に多くのファンが魅了されてやまないのだと思う。
ああ、ロレンツォさんのところの生ハム、食べてみたいな…。
それからもう一社、株式会社ベアーズ の事例にも、「そうそうこれが大事なんだ!」と思わされた。
同社は創業からまだ10年ほどの若い会社ではあるが、既に「家事代行といえばベアーズ」と言われるまでの会社になっている。
僕が「そうそうこれが大事なんだ!」と思わされたのは、同社におけるスタッフ教育。
徹底的に会社の哲学(ミッション)を叩き込み、これが理解できない、体得できないものには仕事をスタートさせないとする姿勢。
(実際、耐えられずにあきらめてしまう人も少なくないとか。)
特に、同社のように「人」がサービスを提供する以上、「人」がどれだけミッションを体現しているかが、ブランディングにおいて最も重要になる。
こんな会社にならば、確かに家事代行を頼みたくなってくる。
本書には、このように小さな会社が自社をブランド化していくための、具体的な指針も示されている。
そこには、色々な要素があるのだけれど、一つだけ強調させていただきたい。
上記で取り上げた2社について、何故僕がその2社に特に惹かれたのかということを考えてみると、そこに「人を魅了するようなストーリー」があったからではないかと思う。
ロレンツォさんのこだわりが分かるからこそ、2年や3年待ってでも彼の作る生ハムを食べてみたいと思うのだし、ベアーズにおけるスタッフ教育の話を知ったからこそ、ならばベアーズに頼めば安心だと思うのだ。
本書は、失礼を承知で言うが、個々の事例はそれほど深いわけではない。
それでも読者に伝わってくるだけのものがある、という事実に、その凄さを感じてもらいたい。
なお、このストーリーの重要性と有効性を説いた本として、『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』があるので、そちらも是非あわせて読んで頂けると、この点の理解などが深まると思う。
(書評記事は こちら )
「小さな会社」のブランディング本であり、文字通り中小企業経営者、経営企画担当者などは一読してみる価値のある本。
さらに、これは「個人」にも十分に適用可能なので、士業など個人で勝負されている個人事業主や、パーソナルブランディングに関心のあるビジネスパーソンにもお薦めしたい一冊だ。
■ 基礎データ
著者: 村尾隆介
出版社: PHP研究所 2008年12月
ページ数: 187頁
紹介文: 起業だ経営だと肩ひじ張るより、最初からブランドをつくればうまくいく
ミッションを持っている会社や大人は、かっこいい。
もちろん、それぞれ素晴らしい会社なのだけれど、その中でも僕が気に入った会社(?)は、ロレンツォさんが経営する、イタリアの田舎の小さな生ハム屋さん。
ウェイティングリストには世界のVIPが名を連ね、2~3年待ちの状態になっているという。
しかし、どんなに偉い人が来ようと、いくらお金を積まれようと、優先して生ハムを売ったりせず、100%、一切の例外なく、すべてのお客様を平等に取り扱うと決め、それを守り通している。
さらに、年間1500本の生産が商品のクオリティを保つための最大の数字であると、自分のサイズを見定め、毎年その数だけ最高の生ハムを作り、適正な価格で販売し、商売に関わるすべての人と生きる喜びを分かち合い、家族との時間を何よりも大切にするという信念に基づいた経営が為されているのである。
このぶれない姿勢は、ロレンツォさんが明確な「ミッション」を持ち、生き方と働き方が一致しているが故のものであり、それが故に多くのファンが魅了されてやまないのだと思う。
ああ、ロレンツォさんのところの生ハム、食べてみたいな…。
それからもう一社、株式会社ベアーズ の事例にも、「そうそうこれが大事なんだ!」と思わされた。
同社は創業からまだ10年ほどの若い会社ではあるが、既に「家事代行といえばベアーズ」と言われるまでの会社になっている。
僕が「そうそうこれが大事なんだ!」と思わされたのは、同社におけるスタッフ教育。
徹底的に会社の哲学(ミッション)を叩き込み、これが理解できない、体得できないものには仕事をスタートさせないとする姿勢。
(実際、耐えられずにあきらめてしまう人も少なくないとか。)
特に、同社のように「人」がサービスを提供する以上、「人」がどれだけミッションを体現しているかが、ブランディングにおいて最も重要になる。
こんな会社にならば、確かに家事代行を頼みたくなってくる。
本書には、このように小さな会社が自社をブランド化していくための、具体的な指針も示されている。
そこには、色々な要素があるのだけれど、一つだけ強調させていただきたい。
上記で取り上げた2社について、何故僕がその2社に特に惹かれたのかということを考えてみると、そこに「人を魅了するようなストーリー」があったからではないかと思う。
ロレンツォさんのこだわりが分かるからこそ、2年や3年待ってでも彼の作る生ハムを食べてみたいと思うのだし、ベアーズにおけるスタッフ教育の話を知ったからこそ、ならばベアーズに頼めば安心だと思うのだ。
本書は、失礼を承知で言うが、個々の事例はそれほど深いわけではない。
それでも読者に伝わってくるだけのものがある、という事実に、その凄さを感じてもらいたい。
なお、このストーリーの重要性と有効性を説いた本として、『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』があるので、そちらも是非あわせて読んで頂けると、この点の理解などが深まると思う。
(書評記事は こちら )
「小さな会社」のブランディング本であり、文字通り中小企業経営者、経営企画担当者などは一読してみる価値のある本。
さらに、これは「個人」にも十分に適用可能なので、士業など個人で勝負されている個人事業主や、パーソナルブランディングに関心のあるビジネスパーソンにもお薦めしたい一冊だ。
■ 基礎データ
著者: 村尾隆介
出版社: PHP研究所 2008年12月
ページ数: 187頁
紹介文: 起業だ経営だと肩ひじ張るより、最初からブランドをつくればうまくいく
ミッションを持っている会社や大人は、かっこいい。
![]() | 小さな会社のブランド戦略 村尾 隆介 PHP研究所 2008-12-10 売り上げランキング : 6330 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
- 関連記事
-
- 【書評】「0円販促」を成功させる5つの法則 (2009/08/22)
- 【書評】ヒットの神様 (2009/08/15)
- 【書評】小さな会社のブランド戦略 (2009/07/26)
- [記事] 単なる美談ではなかった「派遣千人の正社員化」 (2009/07/24)
- 【書評】会計天国 (2009/07/02)
スポンサーサイト