35歳という節目の年齢にある人間の不安心理を察知してのことなのか、「35歳」をキーワードにした書籍が相次いで発刊されている。
当ブログでも、以前にその中から『35歳からのリアル 』を紹介している。
※参考: 【書評】35歳からのリアル
本書は都内で義務教育初の民間人校長となったことでも有名な藤原和博さん。
橋本徹大阪府知事の特別顧問も務められていて、その考え方や発言には学ぶところの多い方。
正直言って、僕は数ある「35歳本」の中でも本書に対する期待が一番高く、そしてその期待に応えてもらえたので、(もしかすると他にもいい本はあるかもしれないけれど)本書で「35歳本」は打ち止めにする。
だからと言って、本書が他には見られないような特別な内容、言葉に満ちているというわけではなく、むしろ、王道をしっかりと押さえたものになっている。
逆に言えば、だからこそ本書で打ち止めにしてもよいと思ったわけであるが。
まずは大前提の現状認識から。
人生を支配する「ルール」が変わった。
なぜなら「成長社会」から「成熟社会」に入ったからだ。(p.5)
ジョエル・バーカーによる名著『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法 』で指摘されたように、このパラダイムの変化をきちんと捉えていないと、これからの人生戦略の方向性を大きく間違えることになる。
※参考: 【書評】パラダイムの魔力
ここで、成熟社会の最大の特色は、「すべてのものが多様化して社会システムが複雑になっていき、変化が激しくなること(p.44) 」であり、「多様化 」「複雑化 」「変化 」の3つがキーワードとされている。
藤原さんは、こうした時代に対する認識を示された上で、
組織に埋没するのではなく、自立した個人として人生を設計し、プランニングして、オリジナリティの高い人生を歩んでほしい。(p.28)
というメッセージを、本書を通じて様々な角度から伝えてくれている。
勘違いされやすいので、藤原さんも明確に記されているけれど、「サラリーマンが悪い生き方」だと言っているのではない。
むしろ、会社という場所は自分の武器を磨くための最高の修行先であるとさえ言っている。
(ただ、こういう発言の影響なのか、会社の志望動機を「自分磨きのため」という若者にたまに出会うが、会社の面接官には受けないので止めてほしい。)
ダメなのは会社の力に頼ろうとするマインド。寄りかかるのではなく、会社が蓄積した資産を使い、会社の中で自営業をやる感覚を持ちましょう。(p.211)
リーマン・ショック以降の経済情勢や世の中を見ていると、この言葉の意味がよく理解できる。
大手企業ですら社員に副業を認めるようになった時代である。
「会社」に頼り切る生き方では未来設計などできやしない。
では、どんな武器をどんなふうに磨けばいいのか… 個人的に示唆の得られた点をいくつか紹介したい。
「クリティカル・シンキングを中心とした論理的思考」と、「相手の意見を聞きながら自分の意見を取り入れてプレゼンテーションする技術」
これはビジネスパーソンの自己啓発ブームの中でも、当初から重視されてきたスキルセット。
関連書籍や講座も多く、既に学んできたビジネスパーソンも多いかもしれないが、日常的な訓練として、テレビのコメンテーターの言説を鵜呑みにすることをやめて批判的に見たり、新聞や雑誌を読んで自分自身の意見を持つということをしていくことが推奨されている。
書評を書くということも、その視座をもってすれば相当な訓練になると思うのだが、時に勢いに任せて感情的になってしまうので…(汗)
「自分の技術とは何なのか」について自身と向き合って話してみること
会社に寄りかからない生き方を目指していくのであれば、これは必須になってくる。
会社の中で自営業をやる感覚になるのであれば、自分の売りというものをしっかり確立していく必要がある。
幸い、僕自身は他でも通用するであろう業務経験を積ませていただき、一方で中小企業診断士としての知識と統合させながら「経営」というテーマで組み立てつつある。
そこに、社会保険労務士も加えていければ、もう少し幅と深みを持たせた「技術」を築けるのではないかと考えているのだが、果たしてどうなることやら。
「続ける」こともひとつの技術
藤原さんは、ろくに本も読まなかった時代があったそうだが、ある意味では自然の成り行きに任せて始め、今では習慣になってしまい、年間150冊ほどの読書を20年以上続けているそうで、この蓄積がご自身の武器になっていると言っている。
ブログを書くということがどれだけの武器になるのかは分からないが、その前提として僕の場合は書籍を読み、自分で考える作業が入るので、少なくともこの趣味の読書を続けることは、僕の武器の形成に大いに役立つことだろう。
自信をもって続けていきたい。
物事を批判的に読み解く能力は、レゴで遊ぶ時に要求される力
藤原さんは、前述のクリティカル・シンキングについて、その重要性を繰り返し指摘している。
この対比として挙げられているのが、ジグソーパズルを早く完成させる力であり、たったひとつの正解にたどり着く力と言っていい。
実は、僕はレゴなどの想像力を使った遊びがとても苦手…orz
子どもの相手をしているときに、妻から「何か作ってあげて」とブロックなど渡されても止まってしまう。
(妻はわりと得意。)
子どもと一緒になって遊ぶところから始めてみないとダメみたいだ。
そのほか、これからの人生を戦略的に考えていくに当たって、いろいろな気付きを得ることができた。
冒頭で書いたとおり、一つひとつの内容が目新しいというよりも、王道を行く、これまでもどこかで目にした、耳にしたことのある内容かもしれないが、全体を貫く太いメッセージによって支えられている。
35歳という年齢に関わらず、これからの自分自身の指針づくりに役立てる一冊として、中堅から若手世代のビジネスパーソンにお薦めしたい。
【関連リンク】
藤原和博の[よのなかnet]
【基礎データ】
著者: 藤原和博
出版社: 幻冬舎メディアコンサルティング 2009年9月
ページ数: 244頁
紹介文:
拝啓、終電帰りのビジネスパーソン様。35歳からは、ただ頑張っても報われません。サービス残業をしても、給料は上がりません。ポジティブシンキングだけでは、乗り切れません。そんな今こそ、あなたと家族がつくる人生が始まるのです。――藤原和博
藤原 和博 幻冬舎メディアコンサルティング 売り上げランキング: 612
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#146 35歳もの
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