■書評■ それでも、日本人は「戦争」を選んだ
僕は、義務教育で日本の近現代史を学んだ記憶があまりない。正確に言えば、わずかに中学校の時に「歴史」と「公民」に分かれながらも学んだ記憶があるが、どの程度の内容を学んだのかは思い出せないレベル。
高校に進んでからも大学受験で「世界史」と「日本史」が受験科目になっていたために確実に受験勉強はしているのだが、特に「日本史」については東大の二次試験でしか使用しないため、相当やっつけで片付けており、特に近現代史などほとんど記憶に残っていない。
(当時から、センター試験レベルの問題でも、他の科目に比べて明らかに満足に正答できなかったし)
もしかすると僕は極端な例なのかもしれないけれど、歴史の授業って過去から遡って進むのが普通。
なので、例えば奈良時代や平安時代の出来事などについては、例えば高校1年生の頃から何度も何度も試験に出題され、試験対策や復習で累積勉強時間が勝手に増えていく。
それに対し、近現代史は授業も追い込み期(あるいは学年末)で駆け足になりがち、酷い場合は本当に(受験的に)重要な出来事だけに集中して、その他は省略されてしまうという事態にもなりかねない。
自分自身で集中的に近現代史に絞って問題演習に取り組まない限りは、累積勉強時間も絶対的に不足しがちになる構造なのだ。
(「学習指導要領」には、もちろんそんなことは書かれていない)
と、自分自身の近現代史に対する知識の薄さを教育制度のせいにしてみても始まらないことは分かっているのだが(汗)
本書は、東大で日本近現代史を教える野島(加藤)陽子准教授が、栄光学園の中高生に向けて行なった特別講義の様子である。
こんな講義が受けられれば、僕のような問題を抱えることもなく、健全に「教育を受けた」学生として胸をはれるだろう。
しかし、最年少の参加メンバーは中学1年生ということであるが、本書の話についていけるとしたら、相当にレベルが高いなあというのが正直な感想。
大人になった僕が読んでもかなり大変で、脳みそ痺れるような感覚を味わうくらいだったのに(汗)
本書のテーマを野島先生はこう書いている。
講義は5回にわたって行なわれたようであり、採り上げられた「戦争」は、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変・日中戦争、太平洋戦争と、いくら僕でも流石に名称だけでなく、概略についても大まかには把握できていると思っているものばかり。
元々細かな知識を暗記するタイプではないので、大雑把な流れの中で捉えられていると思ってはいたのだが、本書を通じて野島先生の講義を紙上体験すると、自分自身の捉え方がどれほど偏ったものであったかを思い知ることになる。
心に「ダム」ではなく、「問い」を持たせることができるような中高生向けの教科書の必要性を野島先生は説いている。
歴史に深い興味を抱く学生もいないわけではないし、そういう人は自ら何らかしらの「問い」を持つのだろうが、僕のような多くの一般生徒に、受験の為だけではない勉強、関心をもった勉強を促すためにも、是非ともそんな教科書を望みたい。
願わくば、将来、わが子がそんな関心事をもって勉学に励んでくれれば言うことはないのだが。
きっと僕が知らないだけで、今すでに世の中には数多くの、こうした優れた「歴史書」が刊行されているのだろう。
自分自身の反省・後悔も込めて言えば、学生諸君には学校で指定される教科書だけではなく、そうした優れた書籍にも当たってもらいたいものだ。
たった数時間、暗記の為の勉強時間を割くだけで、勉強に対する意識・モチベーションを変えてくれる可能性すらあると思う。
本書の内容は高度な部類に入るだろうし、恐らく受験には直接関係ないレベルにあるのではないかと思うけれど、中高生に向けて語られた講義ということで、出来れば同年代の子どもらに読んでもらいたいが、聴講生はみんな歴史研究会所属とのことで、正直ハードルは高い。
しかし、僕のように受験勉強として「歴史」を学んで過ごした大人たちには、自分自身の知の再構築(もしかすると初めての構築になるかもしれないが)の為にも、是非読んでもらいたいと思う。
自らの中にきちんとした歴史認識がなければ、今後について語ることも難しいし、ましてグローバル化する社会において日本人としてのアイデンティティを確立しながら活躍することも難しいだろう。
本書は、間違いなく僕らの頭や心に蓄積し、ファイリングすべきものを与えてくれる。
こういう本に出合えるから、ビジネス書に限らず様々な分野の本を読んでいきたいと思うのである。
是非、この知的興奮を味わってもらいたい。
■ 基礎データ
著者: 加藤陽子
出版社: 朝日出版社 2009年7月
ページ数: 416頁
紹介文:
普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?
高校生に語る――日本近現代史の最前線。
■ 他の方の書評記事
404 Blog Not Found:
それを選んでしまわぬために - 書評 - それでも、日本人は「戦争」を選んだ
精神科医が読み解く、ビジネス・投資・自己成長のヒントになる本:
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
名著を読む:
加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読む
H-Yamaguchi.net:
「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
時々の戦争は、国際関係、地域秩序、当該国家や社会に対していかなる影響を及ぼしたのか、また時々の戦争の前と後でいかなる変化が起きたのか、本書のテーマはここにあります。(p.8)
講義は5回にわたって行なわれたようであり、採り上げられた「戦争」は、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変・日中戦争、太平洋戦争と、いくら僕でも流石に名称だけでなく、概略についても大まかには把握できていると思っているものばかり。
元々細かな知識を暗記するタイプではないので、大雑把な流れの中で捉えられていると思ってはいたのだが、本書を通じて野島先生の講義を紙上体験すると、自分自身の捉え方がどれほど偏ったものであったかを思い知ることになる。
歴史的なものの見方というのは、いきおい、国家や社会のなかに生きる自分という人間が、たとえば、なぜ310万人もの人が犠牲となる戦争を日本は行なってしまったのか、なぜ第一次世界大戦の悲惨さに学ぶこともなく戦争は繰り返されたのだろうか、という「問い」に深く心を衝き動かされたときに初めて生ずるものなのだと思います。(p.47)
心に「ダム」ではなく、「問い」を持たせることができるような中高生向けの教科書の必要性を野島先生は説いている。
歴史に深い興味を抱く学生もいないわけではないし、そういう人は自ら何らかしらの「問い」を持つのだろうが、僕のような多くの一般生徒に、受験の為だけではない勉強、関心をもった勉強を促すためにも、是非ともそんな教科書を望みたい。
願わくば、将来、わが子がそんな関心事をもって勉学に励んでくれれば言うことはないのだが。
きっと僕が知らないだけで、今すでに世の中には数多くの、こうした優れた「歴史書」が刊行されているのだろう。
自分自身の反省・後悔も込めて言えば、学生諸君には学校で指定される教科書だけではなく、そうした優れた書籍にも当たってもらいたいものだ。
たった数時間、暗記の為の勉強時間を割くだけで、勉強に対する意識・モチベーションを変えてくれる可能性すらあると思う。
本書の内容は高度な部類に入るだろうし、恐らく受験には直接関係ないレベルにあるのではないかと思うけれど、中高生に向けて語られた講義ということで、出来れば同年代の子どもらに読んでもらいたいが、聴講生はみんな歴史研究会所属とのことで、正直ハードルは高い。
しかし、僕のように受験勉強として「歴史」を学んで過ごした大人たちには、自分自身の知の再構築(もしかすると初めての構築になるかもしれないが)の為にも、是非読んでもらいたいと思う。
自らの中にきちんとした歴史認識がなければ、今後について語ることも難しいし、ましてグローバル化する社会において日本人としてのアイデンティティを確立しながら活躍することも難しいだろう。
私たちは日々の時間を生きながら、自分の身のまわりで起きていることについて、その時々の評価や判断を無意識ながら下しているものです。また現在の社会状況に対する評価や判断を下す際、これまた無意識に過去の事例からの類推を行ない、さらに未来を予測するにあたっては、これまた無意識に過去と現在の事例との対比を行なっています。
そのようなときに、類推され想起され対比される歴史的な事例が、若い人々の頭や心にどれだけ豊かに蓄積されファイリングされているかどうかが決定的に大事なことなのだと私は思います。(p.408)
本書は、間違いなく僕らの頭や心に蓄積し、ファイリングすべきものを与えてくれる。
こういう本に出合えるから、ビジネス書に限らず様々な分野の本を読んでいきたいと思うのである。
是非、この知的興奮を味わってもらいたい。
■ 基礎データ
著者: 加藤陽子
出版社: 朝日出版社 2009年7月
ページ数: 416頁
紹介文:
普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?
高校生に語る――日本近現代史の最前線。
■ 他の方の書評記事
404 Blog Not Found:
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『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
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加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読む
H-Yamaguchi.net:
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